うなぎの価格高騰の理由と生態
うなぎの価格高騰は、養殖に必要なシラスうなぎの漁獲量の減少や密漁による乱獲及び密輸が大きな原因とされています。シラスうなぎは、地球温暖化などによる海洋環境の変化や河川環境の悪化により個体数が激減している上、グアム諸島沖で孵化後黒潮の潮流で台湾沖及び東シナ海沖を経て日本沿岸に到着する途上の台湾沖で密輸を目的とされる乱獲が行われ急激に漁獲量が減少し価格高騰の原因となっています。現在では、環境省や国際自然保護連合のレッドリストに登録されています。
シラスうなぎは、孵化後黒潮の潮流にのって半年前後で日本沿岸に至ると考えられていますが、秒速2km前後の潮流による半年の移動距離は3万km以上となり日本に至る予測経路に問題があるなど生態がほとんど解明されていない為、年々漁獲量が減少し年々価格が高騰すると考えられています。
うなぎは、日本沿岸到着後河川の遡上を開始しますが、河川の水質の悪化に加え河口堰により遡上出来ない事で充分に成長出来ず産卵が出来なくなるとされています。又、雌雄同体のうなぎは、河口堰付近で個体数が過密になると雄の比率が高くなる生態的特徴があり、遡上し雌に変化する個体の減少と共に産卵数が減少します。実際に養殖場のうなぎのほとんどが雄です。
10年後の価格予想と日韓の完全養殖
うなぎの価格は、2016年の同時期に比べて約15%ほど安くなっていますが、2015年よりは確実に価格が高騰している事やシラスうなぎの漁獲量の増加が見込めない事から10年後には現在の価格の1.5倍〜2倍程度の価格になると予測されています。
独立行政法人水産総合研究センターでは、2010年に完全養殖が成功している事や良質な産卵を促すホルモンの開発が進められている事から、日本国内で完全養殖が実用化されれば価格の高騰は大幅に抑えられると予測されています。しかし、水産総合研究センターの当初の目標だった2020年の実用化は難しいとされています。
韓国の水産科学院では、2012年に完全養殖に成功し、2016年には10万匹の稚魚の成育に成功している事から日本の水産総合研究センターよりも完全養殖の実用化が早いとされ、4兆ウォンに相当する約3900億円の経済波及が見込まれています。日本では、年間1500トンとされる韓国の輸入分が余剰となる事や韓国からの輸入の拡大により台湾産や中国産を含めた輸入うなぎの価格の高騰が大きく抑えられ、高騰が予想される国産うなぎに比べてかなりで安価で購入出来ると予測されています。