うなぎを高温で遠赤外線熱で焼く理由
うなぎの美味しさは、関西風であればパリッとした表面、関東風であればジューシーな表面とふんわりとした白身にあります。表面の仕上がりの違いは、関東風は背開きであることに対し、関西風は腹開きだからです。背開きであれば、身が崩れにくく比較的短時間で焼きあがります。
この表面と内部の焼き加減の違いがうなぎの焼き方が難しいとされている理由です。短時間で内部まで熱が通る遠赤外線効果が求められます。高温加熱は電気やガスでも実現できますが、いずれも表面から焼いていくために内部が加熱されるのに時間が必要になります。うなぎ特有の脂があるため、ふっくらと内部が焼けるのに時間がかかり臭みが残ります。
昔からうなぎを焼くには炭火が良いとされているのも、そのためです。炭火にも種類があり、高級なものほど高温加熱になります。炭火による低温加熱では表面の焼きに香ばしさが残りにくい難点があります。短時間の高温加熱で焼き上げるから表面の香ばしさと共にうなぎ特有の臭みも消えます。うなぎ料理の美味しさは、味や食感以外に香りと見た目があります。
香り良く焼き上げる焼き方が遠赤外線熱による高温の炭火焼です。これが高級な備長炭による炭火焼が良いとされている理由です。
機械焼きと手焼きの二種類の焼き方
うなぎの冷凍食品を生産している会社のうなぎの焼き方には二種類あります。ベルトコンベアを使いガスなどで大量に焼き生産する方法と一匹ずつ職人の手によって焼き上げていく手焼きの方法です。養殖うなぎが出回るようになり、焼いた後に残る天然うなぎ特有の臭みがなくなりました。
そのため比較的長時間焼くことができるようになり、機械で内部まで火を通す焼き方で美味しい冷凍食品を生産することができるようになり、ベルトコンベアによる機械焼きが実現しました。大量生産ができるため、リーズナブルな値段で味わうことができます。需要に支えられ広く市場に出回るようになりました。
しかし「串打ち三年、割き八年、焼き一生」と言われ、一匹ずつ骨の太さや厚みが異なるために最適な焼き方は難しいとされるように、うなぎ料理の価値はうなぎの焼き方によって大きく変わります。この価値まで考えた焼き方が、鰻職人による手焼きです。職人が一匹一匹を自分の技量で見極め微妙な火加減を判断し生産しています。職人の数には限りがあり、炭火による手焼きで生産できる量は限定されますが、絶妙な焼き加減を実現しています。機械焼きと異なり、串を通した穴の跡が残るのが特徴です。