老舗店のうなぎのたれは何故腐らない?
創業100年を超える老舗店などでは「秘伝のタレ」として、創業当初から継ぎ足しのたれが多く使われています。このようなたれはタンパク質や脂質であるうなぎの旨みが長く蓄積されているため腐敗しやすいのではないかと思われがちです。このうなぎのたれが腐らない理由として挙げられる大きなものが「塩分」や「糖分」。塩分や糖分が成分中に多く含まれると、細菌が活動するために必要となる水分が奪われるため、腐敗しにくくなると言われています。うなぎのたれは醤油や味醂などをベースとしているので成分的にも腐敗しにくいもの。
また、うなぎのたれを継ぎ足しによって使い続けるということは、老舗店であれば特にたれの入れ替わりも必然的に行われています。このことによって100年以上使用しているとは言え、実際には古いたれが残っているというものではなく、長年うなぎの旨みや風味が残っている状態とも言えます。
また、老舗店ではたれの継ぎ足しの際にも衛生面において細心の注意を払っており、たれを濾したり新しいたれへの火入れはもちろん、たれを入れる容器はその都度煮沸消毒をしています。このような衛生面への注意を払いながらたれを使い続けることによって「老舗の味」が受け継がれていると言えるでしょう。
腐敗しないもう一つの理由は?
しかし塩分が成分を腐敗させにくくする配合量とは10パーセント以上のもの。うなぎのたれには8パーセント程しか塩分が入っていないと言われているのにかびたり腐敗しないという理由には、うなぎのたれならではの使用方法が大きく関わっています。うなぎのかば焼きを作る際には熱したうなぎを直接たれにくぐらせて焼きますが、この作業の中でたれはその都度低温殺菌されている状態になっています。
低温殺菌は62度以上の温度を持続させることで成立する方法ですが、老舗店などでは一日のうちにかば焼きを焼く頻度が高くなるため、この状態を持続させることができるのです。また、うなぎをくぐらせるという作業は、たれの中を撹拌させるという作業も生み出します。この撹拌作業と共にたれの中をまんべんなく低温殺菌することによって、熟成された味を作りつつ腐敗させないようにしていると言えるでしょう。
一方、家庭では毎日うなぎのかば焼きを作ることがないため、低温殺菌の状態を作り出すことは難しく、長い間うなぎのたれを保存しつつ腐敗を防止することにはそれほど利点がありません。老舗店ならではの環境と作業率が秘伝のたれを腐敗させず、熟成させていると言っていいでしょう。